「由奈、下がれ。」
朔は私の手を掴み、私を後ろに下げる。
「おい、王龍。」
「あっ?」
朔の声に仁が反応する。
周りはすでに喧嘩が始まっていて、騒音が室内に響く。
だけど二人の声が鮮明に響く。
「由奈は俺がもらう。」
「お前なんかに譲るかよ。」
仁は周りを蹴散らし、二階に上がろうとする。
だけど、その表情は無理しているようにも見える。
いつもの余裕たっぷりの表情なんかじゃない…物凄きつそう。
「無理すんな仁!怪我してんだろ。」
いつもとは口調の違う真崎が叫ぶ。
怪我をしている?
仁が、どこを怪我してるの?

