「何もなかったら、それで良い。でも、、、今日のお兄ちゃんの演奏は、お兄ちゃんの演奏じゃない。それは、お兄ちゃん自身が、、、1番、わかってることでしょ?」


完璧を求め続け、いつだって完璧の演奏をするのが兄だ。


それは幼い頃から、何も変わっていない。


「お願い、お兄ちゃん」


そう何度も頼むあたしに、兄は渋々、、、


「、、、わかった」


そう、返事をしてくれた。


時間が時間なだけにやっている病院は、大きな病院だけ。


タクシーに乗り込み、特に会話をすることなく、あたしは兄と病院へと向った。


誰も居ない、夜間の待合室。


時計の針の音が、ヤケに鮮明に聞こえてくる。


兄が診察室に入ってから、もうどれぐらいたっただろう。