キッ

駐輪場で自転車をとめ、耳にイヤホンをつけたまま、ポケットに手を入れ門へと歩き出す。

親がヨーロッパに転勤となり、念願の独り暮らしを始めた。

あたし、桐谷陽向(キリタニヒナタ)。16。

今日からここ、桜藍学園に転入することになった。実家の方では、アパートが見つからず、昔から憧れていたここに自転車で通える距離にに引っ越してきた。

「ここ……か。」

門の柱に掘られた桜藍学園の文字。思った以上に緊張する。門をくぐると……

「………な、なんだよ、これ」

そこで見た光景は、あたしの頭を真っ白にさせた。

昔見た時は、華やかで気品正しい感じだった。

でも、あたしが、今見ているのは、違う光景だ。

あたしが見る限り、スカートを履いているのは、あたし意外いないだろう。

ん?待てよ

って、ことは………

あたしは、思いっきり全力で走った。理事長室へと………

「なあ、あれ、女じゃね?」

「しかもあれ、女子用の家の制服だろ。」

「なつかしー。転校生か?」

「じゃね?つか、顔見るの忘れたー」

「だな。」

ざわざわとする校庭を、全力で走り、下駄箱に着くと、靴を履き替え、理事長室に向かった。

急いで走ったのは、いいものの、あたしはここの校舎の構造など知っているはずもなく、下駄箱から入ってすぐの階段下で誰か来るまで待機することにした。

どんどん登校中のやはり男だけが、あたしをジロジロ見て階段を上っていく。

こんな奴に聞いたら、軽く絡まれるだろう。めんどくさいことは嫌いだ。

その時、階段に大勢いた奴らが右側により、静かに歩いて行く。そいつらの目線の先は階段の上……

興味の沸いたあたしは、そいつらと同じ様に顔を上げた。

階段の折り返し地点にある窓から差し込む太陽の光で顔は見えないけど、そこには、一人階段を下りる伸長の高い男だった。

でも、なにかが違う。

校庭にいた、男とは、なにかが。

そして、太陽の光から、彼は外れた。
そこにいたのは、首を傾げ、微笑む男だった。

パッチリ二重で、柔らかそうな唇、鼻筋の通った、整いまくった、いわゆるイケメンだった。

「?どーしたの?」

そのイケメンは、黒縁の眼鏡をかけ、明るめの茶髪。伸長は、167の私より顔一個分ほど高いだろう。

って、今はそこやないか。

「えっと、あの………」

「君、転校生?とか?」

首を傾げたまま言う。

「まあ、はい。」

そう言うと、首を直すとまた、微笑み

「それじゃあ、理事長室に行きたいんだね?」

この人、きっと頭がいいのだろう。

「はい。」

「ん。そんじゃあ、案内するからおいで」

「え、あ、はい。」