蝉のうるさくなってくる、初夏。
蝉の合唱に混じる日本史のおじいちゃん先生の、子守歌のような声に耐えながら、あたしーー小嶋 茜は、必死にノートをとっていた。
……あいつが、あいつが手を出してくる前に書き終えないと。
カリカリカリ……。
「そして、豊臣秀吉は……」
つんっ。つんつんっ。
背中をシャーペンのようなものでつつかれる。
クソッ。いつもより手が出るのが早い……。
あたしはため息を尽きながら、いつものようにコッソリと後ろを向く。
「森本君。今回は何の用?」
「見て見て!ザビエル上手くかけたんだ!」
……こいつ。あたしの成績よりザビエル優先するのか!