まだ騒がしい教室を出て、昇降口に向かう。



特に残る理由がなかった私は、素直に帰ることにした。



「あれっ、桜野さん?」


「えっ?」



呼び止められて、ばっと振り返る。


後ろに立っていたのは、



…佐倉くん?



「桜野さん一人?」


「あ、うん…友達が生徒会なの」


「おーっ、俺と一緒!帰ろうと思ってたやつが、二人して生徒会と委員長でいないんだ」


「そう、なんだ」


「…あのさ」


「…?」



そこまで行って、佐倉くんは言いづらそうに目を泳がせる。


そしてすぐに私の方に向き直って、



「もし、方向同じだったら、一緒帰んねぇ?」


「…えっ?」


「あ、いや、無理だったら別にいいんだけど」


「う、ううん、全然いい…よ」




少し、びっくりした。



佐倉くんはそういうタイプじゃないと思っていたから。



男の子と帰るなんて、もしかしたら初めてかもしれない。


方向、一緒だったらいいな…なんて少し思ってしまう。




二人して、昇降口まで沈黙のまま並んで歩く。



なにを話せばいいんだろう。


今まで男の子と並んで歩くなんて、なかったから。




上履きを履き替えて、学校を出る。




「…俺、あっちなんだけど」


恐る恐るといった様子で佐倉くんが指を差す。


それはちょうど私が帰る道と同じだった。



「私も、あっち」



そう言うと、佐倉くんは嬉しそうに、一緒だねって笑った。



その笑顔に、私も嬉しくなる。



「じゃ、帰ろっか」



私がこくんとうなずくと、佐倉くんは歩き出した。


私もそれに合わせて歩き出す。