桜と躑躅

蒼矢side

ーー俺があいつに出会ったからーー

ー十年前ー

俺は、この地に両親とともにこの神社に来た。ここは祖父がやっていた神社だとか、理由は聞けずにここに来た。
そして、あいつに会った。
それは俺が五歳の時。


「う、うぅぅ…」
俺は父さんの修行が辛くて、賽銭箱の裏で泣いて居た時。
「どうしたの？」
「え？」
突然、声をかけられて顔を上げると、俺と同じくらいの年の女の子が首を傾げて、俺のことをみていた。
「ごめんね、いきなりでヒックりしたよね。遊びに来たら、泣き声が聞こえてその方に行ったらあなたがいたの。」
女の子は、目を伏せながら俺に言った。
「ううん。蒼ね、泣き虫なんだ。」
女の子に泣き顔を見られたのが恥ずかしくて、ゴシゴシと涙を拭いた。
「あ、ダメだよ。やり過ぎ。」
女の子は俺にハンカチを渡しながら、隣に座った。
「ありがとう。」
「どうして泣いていたの？」
「父ちゃんの修行が嫌だったの。」
「だから？」
「うん。」
その子は俺の話を聞くと、そっかと言って立ち上がる。
どうしたのかと顔を上げると、ふわっと頭に何かが触れた。
「辛かったね。元気だして？ことねね、いつもこうしてもらうと元気出るの。」
と言って、笑った。

俺の母親は、昔から黙ってばかりで冷たかった。優しくしてもらったことなんてなかった。
だから、俺がないても「弱虫」「黙れ」って言葉を投げつけるだけだった。
父さんは修行以外では優しくていつも辛かった時は父さんのとこに行っていた。しかし、こっちに来てからは修行以外でも怖くて、祖父母のところに俺はいくようになっていた。
だから、その子が俺に優しくしてくれたのが素直に嬉しかった。