桜と躑躅

「おじさん!お久しぶりです!」
私は嬉しくて声をあげてしまった。
彼はここ最近、仕事で姿をみていなかった。
「元気そうで何よりです。」
「嗚呼、私もだよ。蒼矢と稽古をしていたのだろう?少し休んで行きなさい。」
おじさんはにこやかに私を座らせると、お茶を持って来てくれた。
「あ、ありがとうございます。」
私はそのお茶をもらうと、口をつけた。
「琴音ぇ。もういるのか?」
ゴクンと飲んだ時、そう君が広間に入って来た。私は湯のみをおいて、笑う。
「うん。ごめんね、先にお茶いただいちゃった。」
「ううん、それはいいんだけど…!!!?」
そのお茶を見た途端、そう君の表情が変わった。
「なぁ、琴音。もしかして、飲んだのか?」
「え?う、うん。美味しかったよ。」
すると、さらにそう君の顔が険しくなり、そして、それはおじさんの方に向く。
「親父!!どういうことだ!!」
それは、今迄聴いたことの無い声だった。なのにおじさんは平然としていた。
「なんのことだ?」
「とぼけんじゃねぇよ!!このお茶は…。」
「落ち着け、確かにお前の予想は当たっているが、もう飲んでしまった。済んだことだ。」
「そんなの!おかしいだろ!!」
二人の会話について行けない。
「まだ、少しだ。そこまで影響はないだろう。」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ!!」
「どういうこと??」
不意に立ち上がりながらそう君に尋ねてみると、彼は暗い顔になった。
「それは…。」
そう君が何か言おうと口を開いた瞬間。「っ!!?」
急に頭に激痛が走り足の力が抜けた。それに気づいたそう君が、私を抱きかかえてくれた。
そしてある異変に気付いた。
「へ……??」
手が少しすけているのだ。
「このお茶は、君を殺すために用意したんだ。」
その言葉に反応して、私はおじさんをみた。おじさんは勝ち誇ったような顔だった。
「親父!!
琴音、違うんだ!」
「違う?何を言う蒼矢。本当のことではないか。お前も知ってるはずだ。」
(そうなの…??)
私は、助けを求めるようにそう君を見るが彼は目を合わせた途端そらした。
(そう君は…私を殺す…)
そう思った途端怖くて、私は彼を押して逃げる。お茶がこぼれたけれど、今はそんなどころではない。

(嘘でしょ…嫌だ…嫌だ!!)
私は自分の存在を確かめるように体を抱きしめる。そして冒頭に戻るのだ。