桜と躑躅

卒業式

みんな泣いていた、私も最後に。

「いや…いやだよぉ。」

一年からずっと私たちの体育を見てくれた五十嵐先生が泣いているのに気づくと不意に涙が溢れたのだ。退場する、まさにその時。
隣にいる友達が私の背中をポンポンッと叩いている。私は口元を押さえながらその場を後にした。


「このクラスはね……」
担任の先生が最後の学活を始める時、すでに私の涙は止まっていた。
(ないてもすぐ泣き止むんだよなぁ……)
と話を聞きながら思っていた。

それが終わると私は五十嵐先生に寄せ書きを書いてもらい、少し話した。
一年から見てくれたのと、親しみやすい先生だったから離れ難かった。
そして、家に帰る。明日は合否発表で緊張感が湧いていた。

「あれ…?」
急に目の前の世界が歪んだ。友達がいたはずなのにいなくて、目の前はどんどん変わって、線が曖昧になる。