バシャッ
顔に冷たいものをかけられて目が覚めた。そして私は手足の自由が利かなかった。
「邪魔…。」
縄で縛られていた、幸いなのか口は自由だったけれど、そこは冷たい空気が漂っていた。
(ここは…?)
そう思ったのもつかの間、目の前に男の人が居た。
「気がついたな、お前ばどこの誰だ?何故池田屋にいた。」
声の主は私を敵視するように見た。その眼には冷たいものしかなく私は答えられずにいた。
「答えろ。」
「さ、佐永琴音です。茨城…。」
「茨城ってのはどこだ?」
(通じない…?)
彼の身なりは暗がりからではあまりわからなかったが、着物だと気付いたのに茨城がわからないということは…廃藩置県の前…ってことは。
「えっと…下総?常陸の国です。」
そう言うと彼はようやくわかったように嗚呼と言っていた。
「な、何故池田屋にいたのかは私にもわかりません…その…一つ質問しても?」
「ああ?」
「……えっと…昨日のことは、確か長州の会合が池田屋で開かれて新選組が飛び込んだので
私は確認するように彼の目を見ながら話した。そこには彼以外にも2人ほどいたのがわかる。
「そうだ。お前は長州のものではないんだな?」
「はい。」私はその質問に頷いた。