桜と躑躅

「…ん…」

次に目が覚めたのは、床の間のようだった。体の下に床独特の冷たさがある。
私は体を起こして気づいた。
「手が…。」
そう、左手が曲がっていた。いつも曲げると激痛が走るというのに…私の手は病のせいで手首を固定していた。はずなのに、いつの間にかそれが外れ、左手の痛みもなかったのだ。
自然に頬が緩むが、これが現世の私ではないと気づく。

カラン…
私の左腰には、さっき雪花さんに渡された、木刀の桜があった。