話術師フェイス

「私がその程度で動揺すると思ってるの?」



 今度は言いがかりじゃない。



 確実にうさ美さんの声は上ずっていた。



「してるじゃないですか?」



 このときになって、初めてボクはうさ美さんの方に視線を少しだけ向けた。



 自分ではあまり意識していなかったが、おそらくこのときボクは勝ち誇った笑みを浮かべていたのだろう。



 うさ美さんの表情が苦痛に歪んでいるのが見えた。



「・・・・厄介者め・・・・・・。」



 再度視線をそらし瞬間、ボクの耳に届く殺意ある言葉。



「その言葉は聞き飽きましたよ。」



 今さら、それぐらいで動揺しない。



 いや、正確にはコレぐらいでは動揺できない。



 あくまで冷静に、たとえ後で震えるぐらい怖くなっても、泣きたくなるぐらい辛くても、今この場では冷静で強い自分を演じなければならないのだ。



 できることならば、今すぐ逃げ出したいけどそれをやったらボクは本当にキララとの約束を守れなくなるだろう・・・。



 それだけは絶対に避けたい・・・。