話術師フェイス

「ごめんね。フェイスくん。私は私でやることがあるから・・・。」



 言いながら、うさ美さんがベンチから腰を浮かせた瞬間だった。



「最後に言っておきますが、犯人は日本史ナンバーの中にはいないですよ。」



 あくまで目線は正面。



 目の端に映るうさ美さんだけは見ないように、声を上げる。



 正面を向かれるときつい・・・。



 ボクは、話術に長けていても対面されると弱いのだ。



「突然、何を言い出すの?」



 うさ美さんは浮かせた腰を再び下ろし、ボクの方に顔を向けた。



 視線が痛い。



 見られているのが分かる。



 背中から流れているのは間違いなく冷や汗だろうな・・・。



 情けない・・・。



「ただの勘です。」



 あくまで、本当にあくまでうさ美さんの方には顔を向けず声を上げる。