臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 四人共最初は黙って歩いていたが、耐えきれなくなったように有馬が口を開く。

「片桐と高田は友達のようだけど、どこの中学だよ?」

「俺達、北山中から来たよ」健太が答える。

「北山だったら、ここから三駅位か? 近くで羨ましいな」

「有馬君は何中?」今度は康平が有馬に訊いた。

「おいおい同じ一年なんだから、君なんて付けんなよ! 俺は西添中だから駅七つさ」

「遠いね」

「通学だけで一時間位かかるな」

 有馬はツンツン頭で目付きが少し悪いせいか、ヤンチャなイメージだが結構気さくな性格のようである。

 少し後ろで歩いている白鳥は、顔が赤くボサボサ頭で体がズングリしている。そして、どことなく暗い雰囲気があった。

 三人の会話も、どこか聞いていない感じである。

「白鳥はどこの中学?」

 たまらず健太が声を掛ける。健太は博愛的な性格で、そこは親友の康平が彼を尊敬していた。