姉さんは美しかった。 誰よりも、何よりも。 その憂いを含んだ美貌は、 誰もが近寄りがたく、 しかし誰もが 惹き寄せられるものがあった。 だから、 もちろん姉さんに近付こうだなんて 馬鹿な輩(やから)はいるわけで、 僕が今までその可能性を 危惧(きぐ)していなかったのが、 不思議なくらいだった。