この宿の奇妙さにすっかり慣れてしまった矢子は、自宅リビングのようにくつろぎ出し、寝転び出す。
「マーベラーさん遅いね。どうしたんだろう?」
「・・・やっぱりすぐには来ないか」
「すぐに来ない?」
 人差し指をピーンと立てた善明。その動作を見た矢子は目を見開いて、善明の言葉に耳を貸した。
「本題に入る前に、昨日マーベラーさんが言っていた言葉覚えてる?」
「宿を抜けたらダメだったよね?」
「もう一つ、どちらか片方でもって言っていたのを覚えてる?」
「そういえばそんな事を言っていたかな」
「つまりオレと矢子が同時に宿を抜けることについては、問題ないってことなんじゃないかな?」
「そ、それはやめた方がいいじゃない?」
「矢子は本当それでいいの?それが矢子の本心?」
「・・・・・」
「・・・それで本題だけどブリキのおもちゃなる人物がオレの前に現れてさ」
「ブリキのおもちゃ?」