相沢矢子の『旧約魔法』レポート

「それからもう一つ。この街に来て、あなたたち以外の人に会っていないのですが」
 あ、そういえば会っていない。
 矢子たちが聞いた音は賑わいの音だけ。善明は更に話を続けた。
「ソワールさん、あなたは誰なんですか?」
「・・・・・」
 お待ちください。
 部屋の外から執事をしていた男が扉を開けたが、その格好は燕尾服ではなく白衣を着た化学者の格好に。
「私はシュタインと言います。善明さんの言うとおり私もソワールさんも依頼者ではないです」
 シュタインと名乗る男は、三人の前に近づき、ソワールもシュタインの元へ。
「実は私たちは雇われた化学者なんです。私は20年以上昔から雇われていて、ソワールさんは二ヶ月前からここに」
 ソワールは頭をペコっと下げ、善明は話を続けた。
「それではこのペンライトとこの霧を作ったのは?」
「ペンライトは私で、この霧を発生させる装置を作ったのはソワールさんです」