霧の街ガーダーンの霧は次から次に発生しているのか、止むような気配がない。
 そのため視界が悪く、隣に人がいても誰も気づかないくらい濃い霧であった。
 危ないから手を繋ごうか?
 善明は矢子の手を取り、ギュッと掴む。矢子はいきなりのことで顔が真っ赤になったが、霧で隠れていたため、善明は気づいていない様子だ。
「それでどこに行く?」
「う、うん。まずはこの周辺でも」
 とは言ったもの、周りに人などいるのかもわからないこの霧。人を探すのも容易でない。
 善明は一歩一歩、まるで罠に引っかからないかのよう、確認しながら歩いた。手を繋いでいる矢子は、善明のその行動に笑ってしまう。
「もうー、こっちは真剣なのに」
「あのね、さっきは使いそびれたけど、このペンライトで照らせば」
 先ほどバスらしき車の時に使ったペンライトを前に照らすと照らした部分だけ、くっきりと視界が晴れた。