相沢矢子の『旧約魔法』レポート

「ねえ善明、さっきから横に入れそうなとこが見えるけど上であってるの?」
「屋上にあると思うよ。この建物、ゴミやチリなどが中に入らないよう窓がないみたいだし」
 ガタッ。
 その音を聞いた矢子と善明は後ろを振り向く。だが、後ろには人どころか姿形も何もない。
「な、何なの今の音?」
「落ち着いて。建物が古いからちょっとだけガタがきているんだよ」
「本当?崩壊とかない?」
「亀裂は見なかったし、土台もしっかりしていたみたいだからそれはない」
「だといいんだけど・・・」
「はいはい出発〜」
 矢子の背中を押し、二人は階段を更に上がって行く。登っても登っても階段はまだまだ続き、しまいには二人の体力は底をつくのであった。
「もう何なのこの階段は〜!女の子には無理〜」
「お、オレ・・・も。疲れ・・・」
 善明は壁にもたれかかって休憩をしているが、矢子はまだまだ余裕なのか、足をバタバタと駄々をこねている子供のようだった。