相沢矢子の『旧約魔法』レポート

「閉めてなかったっけ？」
　誰かがいるかもしれないという気持ちから、善明は慎重にゆっくりと扉に近づく。
　善明さん。
　後ろから聞き覚えがある声が聞こえて、確認のために後ろを振り向くと、そこにはシュタインが。
「これはこれは。何かお調べで？」
「あ、はい。シュタインさんは？」
「ソワールさんが図書館から戻りになられないので、様子を見に」
　空いた扉から覗いて見ると、中でソワールがメモを片手に本を探している姿があった。
「いますね。よかったらオレが伝えておきましょうか？」
「いえいえ、そっかくここま・・・」
「その・・・・・実はそのソワールさんが・・・そのなんて言えばいいか・・・・・気に・・・」
「・・・なるほどそうでしたか。それならソワールさんに宜しくお伝えください」
　シュタインは善明に聞こえる程度の笑い声でその場を去り、善明はその姿が消えるまで動かなかった。