相沢矢子の『旧約魔法』レポート

「う〜ん。考えられるとしたら五階より上の階に」
「上の階?」
「五階より上に歯車があったの気づいた?」
「え!そんなのが上にあったの?」
「うん。あの時は気にしていなかったけど、今考えたら何であるんだろうって」
「ってことは通路が別にあるってこと?」
「多分ね。ブリキ姫が上から覗いたってことは外と繋がる階段や扉があって屋上みたいなやつがあるんだよきっと」
「そうとわかればグズクズしてられない」
 矢子もすくっと立ち上がり、二人はそのまま旧約魔法を使って、時計台に戻った。


 時計台に相変わらず大きく、霧の濃さも変わらなかったが、一つだけある変化があった。
 グーーー。
 時間はとっくにお昼を過ぎており、二人はお腹は空腹に変わっていた。
「矢子、よかったらどうぞ」
 善明はラップに包んだサンドイッチと宿にあったであろう奇妙な筒に入れられたジュースを矢子に渡した。