サヨナラなんて言わせない

「何じっと見てるんだよ」

キッチンで作業をしている涼子さんの姿をじっと見つめていると、突然横から刺々しい声が刺さった。見ればグラスを口につけながら社長が俺を睨んでいる。

「えっ?!いやいやいや、違いますから!誤解ですって!!」

「どうだかな。お前は初めて会った時から涼子に夢中だからな。信用ならん」

「本当に違いますって!そりゃあまぁ、綺麗な女性だとは思いますけど・・・・っていやいやいや、ほんとに違いますからね?!」

社長の目はますます鋭くなるばかりだ。



「あっ・・・!」

その時、ガチャンとキッチンから何かが落ちる音が響いてきた。

「どうした?大丈夫か?!」

「あ、ごめんなさい。ちょっと手が滑って落としちゃっただけ」

そう言って大丈夫と笑う彼女だが、次の瞬間には社長は立ち上がって涼子さんの元へと駆けていった。そんな彼に苦笑いしつつも嬉しそうに微笑む彼女は本当に綺麗だ。
キッチンに二人並ぶ姿は本当に絵になる。
まさに美男美女カップル。

初めて彼女を見たとき、綺麗だと思ったけれど、それ以上に言葉にできない透明感のようなものを感じた。見た目が綺麗とかそういうことよりも、彼女が醸し出す空気が透き通っていて、そのことに言葉にできない魅力を感じた。