サヨナラなんて言わせない

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「岡田さん?どうかされたんですか?」

突然意識に舞い込んできた声にハッとする。

「あっ・・・・いえ!すみません、ちょっと昔のことを思い出していて」

「ふふっ、じゃあこちらに置いておきますね」

「はいっ、ありがとうございますっ!」

花のような笑顔を見せた女性は俺の目の前のテーブルにおいしそうな角煮の入った皿を置いて行った。


彼女の名は・・・南條涼子さん、
南條さんの奥さんだ。


社長がずーーーーーーーっと一途に想っていた女性。
詳しいことまでは聞いていないが、一時期別れていたことがあるらしいけれど、社長はその間も変わることなくずっと彼女だけを想い続けていたとか。
どんなに他の女の誘惑があろうとも見向きもしなかったのは彼女がいたから。
森さんの事務所にいた頃彼がおかしくなったのは彼女に振られたからだということも後に知った。
あんなイケメンでも振られることがあるのかなんて驚いたりもしたけど、男女の関係はそんなに簡単なものでもないよななんて妙に納得もした。


復縁した後にようやく俺は涼子さんの存在を教えてもらうことができたのだが、あの社長が一途に愛し、そして普段はクールな社長をあそこまで変えてしまえる女性は一体どんな人なんだろうと、想像は膨らむばかりだった。