サヨナラなんて言わせない

それからしばらく同じような状況が続いたが、二週間ほど過ぎると南條さんは本格的に仕事に戻って来た。
俺はカナさんの言葉を信じて自分からは余計なことは聞かないように努めた。

だが最初は明らかにどこか落ち込んでいて、昔の姿を彷彿とさせた。
あの時と同じだ・・・・・

と思っていたがそうではなかった。

あの時は落ち込んでいて仕事なんか何も手につかない状態だった。
でも今回は違う。
確実に憔悴しきっていたけれど、それでも仕事だけはきちんとこなしていた。
いつもの彼と何も変わらずに。

良くも悪くも一体何が彼をそうさせているのだろうか?
ますます謎は深まるばかりだった。



普段は見ることのできない社長の一面が垣間見られるようになってから二ヶ月ほどが過ぎようとしていた頃から、ちらほらととあるキーワードが俺の耳に入るようになっていた。


『涼子』


社長の口から何度か出てきた名前だ。

一体誰だ?社長の好きな人か?
それともカナさんのような人か?


日を追うごとに頻度が増えていくその存在で俺の頭はいっぱいになっていった。