事務所を立ち上げて最初のうちは南條さんが以前から懇意にしてもらっている人を通して仕事をもらったり、森さんから斡旋してもらうこともあった。
でもそれも本当に最初のうちだけだった。
もともと学生時代からあの事務所でバリバリ働けていた南條さんだ。
若いとはいえ年齢以上に広い人脈が既にできていた。
南條さんは仕事が軌道に乗る保証なんてないって言ってたけど、
実際は仕事が入らない時期がなかった。
むしろ多忙を極めている、そう言った方が正解だ。
たった3人、しかもカナさんは経理担当ということもあり、一度にこなせる仕事の量も自ずと限られていった。
どんなに忙しくても南條さんは期限より相当早く仕事を切り上げていた。
相変わらず全く休みも取らずに。
せっかく愛する人と新しい一歩を踏み出せたのだから、
少しは二人の時間も大切にすればいいのに・・・
なんて、余計なお世話ながら俺はそんなことを考えていた。

