サヨナラなんて言わせない

はぁ~っと溜息をつくと、手のひらを顎の下に組んで遠くを見つめた。

「・・・アンタの言うとおりよ。私はずっと司のことが好きだった。一人の男として。
・・・でもそのことに気づいた瞬間からこの想いは封印するって決めたの。彼のことは好きだけど、そういう相手として求めることは許されない。いや、自分の中でもあり得ない」

中村はこちらを見ながら黙って話を聞いている。

「彼はそういう括りで語れないほどの存在なの。恋愛なんかで失うことはできない。それくらい私にとっては大切な存在。・・・・だから、彼には絶対に幸せになって欲しかった。彼を本当に幸せにしてくれる相手と」

「・・・・涼子さんはそれに相応しい相手でしたか?」

「えぇ。それはもう悔しいほどにね。20年以上付き合ってきて、司にあんな笑顔をさせられるのは彼女以外にいなかったもの。司は本当に見る目がある男だと思うわ。・・・まぁバカだから散々遠回りしたけどね」

中村がプッと吹き出す。

「確かに。仕事ではあんなに切れ者なのに、涼子さんのことになるとてんで駄目ですもんね」

「ほんとにね。・・・・でもそれが司の良さでもあるのよ。不器用だけど真っ直ぐ。
彼女はそんな司の全てを受け入れてくれた。回り道した分だけ、彼らは幸せの意味もわかってる。だからもう何も心配することなんてないわ」