サヨナラなんて言わせない

「あっ、カナ!お前どさくさに紛れて触るな!!」

慌ただしく背後から聞こえてきた声に振り返ると、部屋に戻ってきたもう一人の主役が血相を変えてこちらに足早に近付いてきていた。
そして目の前まで来ると花嫁の体をグッと引き寄せて自分の方に抱き込む。

「ちょっ・・・司?!」

「なぁに~?!涙が零れそうだったから拭っただけでしょ?ちょっと度量が狭すぎるんじゃない?!」

「何とでも言え。お前には前科があるから信用ならないんだ。しかも式の直前にキスでもされてみろ。シャレにならないんだよ」

そう言って顔をしかめる新郎の姿に室内から笑いが零れる。
今日はいつも以上にいい男になっているっていうのに、まるで台無しだ。

「全く、涼子ちゃんのことになると相変わらず暴走しっぱなしね」

「放っとけ。それだけ涼子が大事なんだよ」

恥ずかしげもなくサラッとそう言ってのけた司に彼女の顔が赤く染まる。

「あーあー、バカップルは今日も健在ですねと。今からこれだったら今日一日もたないわ。さ、皆先に出て待ってましょ。いつまでもここにいたら溶けて死んじゃうわよぉ~」

その言葉に室内がドッと沸いた。

やがて主役二人を残してその場にいた全員が式場へと移動した。