サヨナラなんて言わせない

俺は彼女の左手をそっと握ると口元まで引き寄せて瞳をそらさずに言った。


「三国涼子さん、俺と結婚してください」


その言葉を聞いた途端、ずっと落ちずに張り詰めていた涙がポロリとこぼれ落ちた。先程までのくだけた雰囲気はすっかり形を潜め、何とも言葉にできない緊張感が部屋中を走る。

涼子は大きな瞳を動かして初めて自分の左手を見た。
そこにはダイヤモンドと彼女の誕生石であるルビーがちりばめられた指輪が輝いている。

「・・・だって、嘘・・・・いつの間に・・・・?」

彼女は未だに信じられないとばかりに震えている。
それもそうだろう。
彼女とよりを戻してからの俺は、仕事以外では彼女から片時も離れることがないのだから。一体いつの間にこんなものを準備したんだと不思議に思うのは当然のことだ。

「これは事務所を立ち上げたときに準備しておいたものだよ」

「・・・・・・えっ・・・?」

俺の言葉に彼女の瞳がより一層大きく見開かれる。
フッと笑うと口元に寄せた彼女の手のひらにそっとキスを落とした。