サヨナラなんて言わせない

「・・・・何?」

じっと見つめる俺の視線が気になったのか、涼子がキョトンと振り返る。

「いや、何でも。・・・・涼子、ちょっと目を閉じてて」

「え・・・何?・・なんで?」

「いいから。変なことはしないから。ほら、早く」

「・・・・・?うん・・・・」

「俺がいいって言うまで開けたら駄目だからね」

納得いかない顔をしつつも涼子は黙って目を閉じた。
本当ならこのままキスしてしまいたいけれど今は我慢だ。

俺はポケットに手を伸ばしずっと忍ばせておいたある物を取り出す。
そして涼子の左手を取ると、その細い薬指にするすると目的のものを通していく。
差し込んだ瞬間涼子の体がビクッと大きく反応する。まだ目を開けてもいないのに、既にその手は震え始めていた。

「・・・・・・はい。いいよ、目を開けて」

ニッコリ笑う俺の目に映るのは、恐る恐る開いた目に既に涙を溜めている彼女の姿。それは指でつつけばすぐに零れ落ちそうなほどだ。

「・・・・・つ、かさ・・・・?」

震える声でなんとか俺の名前を呼んだ彼女はまだ一度も手元を見ていない。その瞳は俺だけを捉えている。