サヨナラなんて言わせない

「一つ聞いてもいい?」

ずっと黙って聞いていた涼子が思い出したように口を開く。

「もちろん。何一つ包み隠さず全て正直に話すよ」

「どうしてうちのマンションを知ってたの?」

まさかの質問に心臓が跳ね上がる。
だが彼女からすればその疑問は当然のものだろう。
・・・後ろめたいが正直に話すしかない。

「それは・・・こんなことを話せばまた嫌われてしまうかもしれないけど、一度だけ、・・・涼子に会いに行ったことがあるんだ」

「・・・え?」

涼子の目が驚きで見開かれる。
必死で記憶を辿るが身に覚えがないのだろう。当然のことだ。

「涼子は知らなくて当然だよ。俺が一方的に見てただけなんだから」

「・・・どういうこと?」

「1年半前に独立して自分の事務所を興したとき、新しい一歩を踏み出すためにどうしても涼子の顔が見たくなったんだ。一目だけでもいいから元気な姿を見たい。・・・それで申し訳ないと思いながらも会社まで行った。遠くから一目見て帰るつもりだった。でも久しぶりに見た涼子に目を奪われてしまっていた。君は何一つ変わらず・・・いや、ますます綺麗になって自信をつけたようにも見えて、俺には眩しすぎた。・・・そして気が付けば君の住むマンションまでついて行ってしまってた」

「・・・それってストーカーじゃん」