サヨナラなんて言わせない

「涼子は俺なんて全く眼中になかっただろう?俺がどんな顔だろうと身なりだろうと、どうでもよかっただろ?」

「そ、それは・・・」

図星なのだろう。涼子はどこかバツの悪そうな顔をする。
その顔を見ているだけで心が和んでいく。
そんな君だから好きなんだ。

「それが俺には嬉しかったんだ。俺を形から見てるんじゃないってことが。それに、涼子は俺が何よりも大事にしてきた設計図を褒めてくれた。そのことがとてつもなく嬉しかった。・・・もちろんそれらはきっかけに過ぎない。一緒に過ごす中で、君の優しさや明るさや・・・毎日全てのことにどんどん惹かれていった」

涼子は真っ直ぐ俺を見て話を聞いてくれている。
すぐにでも抱きしめてしまいたい衝動を抑えて言葉を続ける。

「涼子が俺を受け入れてくれたときは天にも昇るほど嬉しかった。
・・・でもそれと同時に急に怖くなったんだ。君がいなくなってしまったらどうしよう・・・って。我ながら情けないと思う。でも、母親の姿やすぐに心変わりした昔の女性がいつも俺の心を締め付けて、息が出来ないほど苦しくなって・・・幸せなのに不安で押しつぶされそうだった。だから俺は・・・」

徐々に声が小さくなっていく俺の代わりに続く言葉を言ったのは彼女だった。

「・・・浮気することにした・・・?」


ズキン・・・


その言葉が俺の心臓を締め付ける。
俺が傷つく資格なんてこれっぽっちもないのに、いざ彼女の口からそれを言われると息もできないほど苦しい。彼女は比較にならないほど傷つけ苦しめられたというのに。
震える手をギュッと握りしめて己への怒りをなんとか抑えつける。