サヨナラなんて言わせない

仕事終わりに誘われた酒の場で突然そう言われた俺は、ただ驚くことしかできなかった。もちろん独立は現実的なものとして考えていた。だが、当時の俺はまだまだ駆け出しのひよっこだ。
森さんの支えがあってやっと半人前のような俺がこの若さで独立?

予想外の提案に軽くパニックを起こす俺に森さんは冷静に言った。

「お前ならやれる。やってみろ」

俺の目を見て真っ直ぐに。
彼はできないことは言わない人間だ。
その彼が俺に本気で言っている。お前ならやれると。

俺は息を呑んだ。

やれるものならやりたい。だがまだ独立するには準備が足らない。
何よりも独立資金が充分でないし、仕事をしていく上で人脈だって必要だ。
俺にはまだまだ・・・・

「資金なら俺が一部援助してやる。仕事も最初は俺の所から斡旋してやる。お前ならすぐに実力で人脈を広げていけるはずだ。・・・・どうだ、やってみないか」

俺は彼の言っていることが信じられなかった。
何故・・・・?何故こんな俺にそこまでしてくれる・・・?
彼の支えがなければとっくに駄目になっていたような弱い俺を・・・・

気が付けば震えて言葉が出せない俺を見て彼はフッと目元を緩めた。