サヨナラなんて言わせない

その年、俺は奇跡とも呼べる合格を果たした。

設計製図は昔から自信があったが、問題は学科の方だった。
ここさえ通過できれば何とかなる・・・!それだけを信じて周りの支えもありながら、死に物狂いで勉強した結果が実を結んだ。あの状況からの追い込み、そして合格は本当に奇跡だと自分でも思う。
だが森さんだけは「お前が元々ちゃんと努力していた成果が出ただけだ」と言った。
どこまでも格好良すぎて、俺は一生彼には追いつけないと思った。


念願の合格を果たしたが、これはスタートラインに立ったに過ぎない。

目標はあくまで独立して自分の設計した建物をつくり出していくことだ。

俺はそれからも森さんの下で働きながら、独立するためのノウハウをこれでもかと学ばせてもらった。彼は俺がいつか独立したいという夢を全面的にバックアップしてくれた。自分の会社から貴重な人手が減ってしまうのだというのに、彼は嫌な顔一つせず、むしろどこか嬉しそうだった。

そんな彼の想いを無駄にしないためにも、俺は一日も休むことなく、休日だって無給でいいから勉強させて欲しいと事務所に入る許可をもらい、仕事に没頭した。



それから2年ほど過ぎようとした頃、森さんに突然言われた。

「そろそろ独立を考えたらどうだ」と。