サヨナラなんて言わせない

無駄な時間を過ごしてしまったせいで資格試験までの時間がほとんど残されていなかった。ただでさえ狭き門、働きながらの両立はかなり厳しいものがある。
しかも俺は最短での取得を目指していた。

そこで俺を救ってくれたのが森さんだ。
俺が勤めていた会社の社長だった彼は、学生時代からバイトで世話になっていた俺にとかく目をかけてくれていた。俺が塞ぎ込んでいるときも、仕事でミスをしても、敢えて何も言わなかった。
怒鳴りつけられても殴られても文句は言えない俺を、黙って見守ってくれた。

やがて復活した俺に言った。

『取り戻す覚悟はできたのか?』と。

涼子とのことを度々相談していた俺は、たったその一言で彼の器の大きさを感じた。
短いその一言が、俺の心に火をつけた。

俺には支えてくれる友人も、見守ってくれる大切な人生の師だっている。

そんな彼らに、そして誰よりも涼子に顔向けできないような男になるわけにはいかない。


仕事の合間も惜しんで色々俺に厳しく指導してくれる森さんに心から感謝した。絶対に、絶対に一発で合格してみせる。

俺は寝る時間も削って必死で自分に追い込みをかけた。