サヨナラなんて言わせない

カナの視線の先にはカーテン一つつけられていない剥き出しのガラスが部屋中に広がっていた。外が見えないのは唯一障子のあるこの和室だけ。
カナの言葉に俺はかぶりを振る。

「この家をデザインできるのは涼子だけだ」

俺の放った言葉にカナの瞳が寂しげに揺れる。

「・・・じゃあエアコンくらいつけなさいよ!雪が舞った日にカーテンもない、エアコンもつけてない、おまけにこんなに薄っぺらいせんべい布団しかないんじゃ具合も悪くなるに決まってるでしょ!!」

まるで母親のように小言を連ねていくカナに思わず笑いが零れる。

「・・・・はは、その通りだな。そうか、雪が舞ったのか。やっぱりなぁ、どうりで夕べは寒いと思ったよ」

「ほんとにあんたはっ・・・・!」


それ以上カナの言葉は続かなかった。
言葉の代わりに次々と涙が溢れ出てくる。
涼子とのことは聞かなくてもカナには全てわかっているんだろう。
俺が向き合ってすらもらえないということを。

俺が何も口にしないことが、かえってそのことを顕著に示していた。



シーンと静まりかえった室内に、カナの啜り泣く音だけが響いた。