サヨナラなんて言わせない

想定外の攻撃を受けて固まる俺にさらに追い打ちをかけるように男は続けた。


「あなたが彼女を渡さないと勝手に言うのは自由ですよ。言論の自由って言葉があるくらいですしね。でも少しは自分の立場を考えたらどうです?そんなに正々堂々と胸を張って言えるような人なんですか?あなたは。
それにあなたがどう言おうと選ぶのは彼女なんです。そのことを忘れないでくださいね?」

捲し立てるように一気に言うと、男は不敵に笑った。


ギリギリと拳が震える。
氷のようだった指先が、血管が破裂してしまうんじゃないかと思うほど熱い。


「・・・・じゃあ、失礼しますね」

フッと余裕のある笑みを零すと、男は颯爽とその場から離れていった。





俺は何一つ反論もできず、


男を振り返ることもできず、


怒りなのか、悲しみなのか、その理由もわからないままただ全身を震わせて、徐々に遠ざかっていく足音を聞きながらその場に突っ立っていることしかできなかった。