凍り付くほど冷たくなった手を擦り合わせる。
もうすぐ日付が変わろうとしている。
もしかして今日彼女は帰って来ないのだろうか・・・・?
ズキンと胸が痛んだ時、目の前の通りに一台のタクシーが止まった。
彼女が乗っているかもしれない、俺はその場に立ち上がると中から出てくる人物をじっと見つめた。
「涼子さん、ほらしっかり歩いてください」
「う~ん、歩いてるってばぁ!」
しばらくすると中からあの男に支えられるようにして涼子が降りてきた。
かなり酔っ払っているのか、フラフラと覚束ない足取りだ。
それから二人で何やらぼそぼそと話をすると、やがて涼子は彼の手を自分の体から外した。ただそれだけのことなのに、情けないほどホッとしている自分がいる。
さらに一言二言を声をかけると、涼子はマンションの方へと体を向き直した。
が、その足はその場でピタリと止まってしまう。
「涼子・・・」
こんな時間までいるとは夢にも思わなかったのか、彼女は驚愕の顔で俺を見ている。酔っ払っていても、俺のことは瞬時に把握したようだった。
俺は寸分も彼女から視線を逸らすことなくゆっくりと近付いていった。

