サヨナラなんて言わせない

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「じゃあ後は頼む」

「任せて。・・・・頑張れよ!」

そう言ってスッと差し出されたカナの手を思いっきり叩くと、どちらからともなくフッと微笑んだ。



事務所を出たのは5時前。
予定より遅くなってしまったため、足早に目的地へと急ぐ。
どうなるかまだわからないというのに、俺の足取りは不思議なほど軽かった。
ようやく彼女に真実を打ち明けられる。そのことが嬉しかった。


電車で移動するとマンションの最寄り駅近くにあるスーパーへと一直線に向かう。
今日のメニューはもちろん決まっている。
彼女が俺が作る料理の中で一番好きだと言ってくれる、あの3点セットだ。
はやる気持ちを抑えながら、少しでも鮮度のいいものを選んでかごへと入れていく。
そうして一通り必要な物を買いそろえると、マンションへと急いだ。

「日が暮れると寒いな・・・」

真冬の今、外に出るとすっかり暗くなっていた。
すっかり歩き慣れた道のりを行くと、途中で男の影が横から突然現れた。

「社長!そろそろ限界ですよ~!早く帰って来てくださいよぉ」