サヨナラなんて言わせない

気持ちを切り替えるようにして家を出て行く彼女の後ろ姿に向かって俺は言った。


「今夜はオムライス作って待ってますから」


その言葉に涼子がハッとして振り返る。
だが、次の瞬間にはもう扉は閉まっていた。

あの表情・・・彼女は何か気付いただろうか?

人が聞けば意味不明な言葉に違いない。
だが俺たちにとってはそうじゃない。

まだ記憶の戻っていない俺がオムライスを作ったとき、明らかに涼子は動揺していた。それは彼女にとってもこのキーワードが重要なものであることを証明している。

そして今。
大事な話を今夜聞いて欲しいと言った俺が放ったこの言葉。
・・・きっと彼女ならそこに何らかの意味があるとわかったに違いない。


そう、全ては今夜。
彼女が帰ってくれば俺たちの何かが変わる。

だから俺は今までで一番おいしいオムライスを作って君を待とうと思う。