サヨナラなんて言わせない



あれから2時間ほどが過ぎると、徐々に涼子の呼吸が落ち着いてきた。
薬が効いてきたのか、噴き出すような汗が出始めている。

「タオルを替えてくるから待ってて」

眠る彼女にそっと声をかけると、一旦部屋を出た。
新しいタオルに氷水、飲み物など、必要な物を手際よく準備していく。
先程熱を測ったら39度近くあった。まだこれから上がっていく可能性もある。
一時だって離れたくない。俺は彼女の待つ場所へと足早に戻った。

部屋に入ると、横になったままぼんやりと目を開けている涼子の姿が目に入った。

「あ、気付きましたか?」

入り口から声をかけると、大きくて潤んだ瞳が俺を捉える。
次の瞬間、彼女の口から零れた言葉に胸が激しい高鳴りを覚えた。


「司・・・」


ドクンッ・・・


彼女はまだ寝ぼけているのだろう。
だから意識して言ったわけではないのだと思う。
だがそれでも、3年ぶりに彼女の口から発せられた『司』という言葉に、
自分でも信じられないほど全身が粟立っていくのがわかる。

この手に抱きしめたくなる衝動を抑えると、なおこちらを見つめている彼女に微笑んだ。