サヨナラなんて言わせない

「涼子、薬を飲んでくれ。わかるか?」

「ん・・・・」

トロンとして俺を捉えた瞳の焦点はほとんど合っていない。
だがひとまず目を覚ました彼女の体を抱き込むと、手を添えながらゆっくりと薬を飲むように誘導していく。ほとんど本人に意識はないだろうが、彼女はなされるがままその動作に従った。

ゴクンという音を立てて何とか薬を飲ませることに成功する。
力の入らない口元からスーッと水が零れて首筋を伝っていく。
指でそれを拭い取ると、いつの間にかまた目を閉じていた彼女の体を再び横にした。

「・・・・悪い、涼子。許してくれ」

意識のない彼女に謝ると、俺は立ち上がり小さなチェストへと足を進めた。
籐製のそれにはよく見覚えがある。
付き合っていた頃から彼女が愛用していた物だ。
昔と変わっていないのであれば・・・・
下から二段目の引き出しをそっと開ける。

「・・・あった」

そこには予想通りスウェット類が入っていた。
彼女がどこに何をしまっているか、よくこうして看病をしていた俺にはわかる。
そして以前と変わっていないことが嬉しかった。