忘れた

「もう、友達には戻れないのかな…」


鏡の俺に話しかける。もちろん返事はない。


「ごめんな、奈緒…」


風呂場から出て洋室に入ると、奈緒はソファの端っこにチョコンと正座していた。


一瞬、目が合った。が、すぐにそらされてしまう。


他に座るところもないので、俺はソファの反対側の端に腰掛けた。


沈黙が重苦しく感じる。


とりあえず俺はタオルでゴシゴシ髪をふいた。


「まっすぐだね」


沈黙を破ったのは、奈緒だ。こっちをジッと見ている。


「え?」


「髪の毛。いつもクルクルしてるじゃん? 濡れるとまっすぐになるんだなーと思って」


なんだ、髪の毛のことか。


「ああ、そうだな。言っとくけど、これ天パだから」


そう言うと、奈緒は目を丸くして驚いていた。