忘れた




あたしは病院を出てから、まっすぐ自宅へ帰った。


「ただいま」


沈んだ気分のままトボトボ階段を上って、部屋のベッドにダイブした。


あーあ。


かおりって誰よ。


勇介の奴…


ムカつく。


好きだの惚れただの言ったくせに、あたしのことあっさり忘れるなんて。


ムカつくーッ


感情は、悲しみから怒りに変わった。


あたしは枕に顔を埋めて、思いっきり叫んだ。


「あーーーッ!勇介の、バカヤローーーッ」


すると、少し胸がスッとした。


勇介のバカ。


かおりって誰よ。


ああ、あたしさっきから同じことばっか考えてる。


モヤモヤした気分のままベッドにうつ伏せになっていると、カバンの中から電子音が聞こえてきた。


ケータイの着信音だ。


“七瀬 開”


ななせ…かい。


ケータイの画面に表示されたのは、“開”という珍しい名前だった。