忘れた

「かしこまりました。注文を繰り返させていただきます…」


店員はあたしたちの注文を早口で繰り返した。


「以上でよろしいでしょうか」


「あ、はい」


店員はお辞儀をし、厨房へ向かった。


ちらっと勇介を見ると、彼はなんとデザートメニューを眺めていた。


あたしは驚いてしまった。あれだけの注文をしておきながら、デザートまで頼む気ですか。


と、勇介と目が合った。


「奈緒も見る? 美味しそうだよ」


「あたしはいい」


「そっか」


勇介は視線をメニューに戻した。


今のあたしの言い方、冷たかったかな? 嫌われたかも。


頭に浮かんだ不安は、妙に懐かしかった。中学の頃は、毎日そんな事ばかり考えていたな、としみじみ思った。