忘れた

離れていった勇介の顔を見上げる。なんだか怒っているように見える。


「奈緒は、俺に会いたくないの?」


さっきとは打って変わって、強い口調。


「会いたいにきまってる。でも…」


「でも、何?」


「勇介が心配なの。あたしのせいで、勇介が疲れてるように思うから…」


電話の声だって、疲れてるって伝わってくることがよくあった。


どんな仕事してるのか知らないけど、勇介が倒れたら困るから。


「だから、大丈夫。電話も毎日じゃなくていいの。無理しないで」


勇介は険しい顔で、あたしを見つめている。


しばらく黙った後、勇介は静かに言った。


「早水にキスされたとき、どう思った?」


「え?」


「ドキドキした?」


なんで、そんなこと聞くの?


「俺が奈緒にキスしたときみたいに」


なんで、そんなこと言うの?


あたしは声が出なかった。