「今日も暑いですね」
雑踏の中。ふいに、声が聞こえた気がして周囲を見渡した。
スーツ姿の男の人。
コンビニの入口横で、目が合うとにっこり笑った。
「おばあちゃん、暑いけど元気ですか??」
そうして、高い背を屈めて小林さんへ声をかける。
「おや。スーパーのお兄ちゃんじゃないか」
「スーパーのお兄ちゃん...??」
どう見ても、立派なサラリーマンだけれど。
首を傾げると、男の人は恥ずかしそうにまた笑った。
「俺、この近くのスーパーで就職するまでバイトしてたんです。小林のおばあちゃん良く声かけてくれて」
「無事、会社に受かったんだねぇ。良かった、良かった」
「もう二年も前だから、覚えてるかなーと思ったんだけど」
「足は悪いけど、まだまだボケちゃいないよ」
軽快な言葉の交わしかたに、親しさを感じる。
