慎重、というか。
口から出かかった言葉を飲み込み、目の前のカップの赤い水面に視線を落とす。
慎重というより、怖がりなんだ。それは自分自身が一番分かってること。
前の仕事は看護師をしていた。
小さい頃から憧れていて三年間専門学校に通い、試験に合格し念願の看護師になった。
どんなに大変な仕事か、学生時代に嫌と言うほど分かったつもりだったし...それ以上に、人のために尽くせるこの仕事が魅力的だったんだ。
だけど....私はそこから逃げ出してしまった。
責任の重さや、命の消える瞬間に立ち会うことがどうしようもなく怖かった。
看護師ならは誰もが乗り越える道を、私は越えられなかったんだ。
