はあ。


何回目かわからないため息。



「なにしてんだ。あたしは」


もうやだ…と泣きそうになりながら、
宿の廊下を歩く。


他の人たちは、お風呂に入ってるか
部屋でゆっくりしてるだろうから
廊下には、あたし1人だけ。



パタパタとスリッパを鳴らしながら、
ゆっくりと俯いて歩いていたとき。




「ねえねえ!」


後ろからトントンと肩を叩かれて、
「へっ!?」と間抜けな声を出しながら
バッ!と振り返った。