---ピンポーン...。
控えめに玄関のチャイムが鳴った気がした。
時計はまだ午前4時を指している。
気のせいにして再び寝入ろうとした篠田 陸は、何度もチャイムを激しく鳴らし始めた人物について予測し、まさかと眼を見開いた。
慌てて玄関に行ってドアを開き、眼の前にいる人物を見て、やっぱりとつぶやいた。
「にゃは。陸久しぶり。
って言っても、先月も会ったけど。」
そう言って整った顔をほころばせたのは、幼馴染の間宮 涼子である。
「涼子、仕事は。」
「いつものことながら休んで来たよ。」
いつものことながら休んで...その言葉を聞いた陸は、軽く涼子の頭を叩いた。
涼子は去年の4月から陸の家に来るようになった。
しかも1ヶ月に1、2度のペースで、毎回休暇を取って陸に会いに来るのだ。
「わざわざ休暇を取らなくたって休みの日に来ればいいだろ、俺は今日だって仕事なんだぞ。」
陸は涼子が来る度にいっているセリフを半ば呆れながら言った。
「まあまあ、怒らないの。
とりあえず中入れてよ、3月の早朝はまだかなり寒いんだから。」
涼子はそう言って、陸の部屋に入って行った。