笑顔でさよならを

「おい、繭花。お前、最後の一言、今まで教えていた俺に対して失礼じゃねぇか？」


私の頭の上から、お兄ちゃんのムッとした声が。


「えっ？だって、お兄ちゃんより解りやすいんだもん！それにお兄ちゃん、ちょっと間違えたらすぐ怒るじゃん!!」

「それは、お前がいつも似たような問題ばっか、間違えるからだろ!!」

「だって、わからないもんは仕方ないでしょ!!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて……」


兄妹ゲンカを始めた私達の間に蒼大さんは割って入る。


「ねぇ、繭花ちゃん。もし、俺でよかったら教えようか？」

「えっ？いいの？」


蒼大さんと一緒に居たら自分が解らなくなる、そう思う反面、蒼大さんと会える事が嬉しいって気持ちもあった。


この時は、自分の気持ちの変化に気付いていなかった……


これが、私と蒼大さんの初めて会った日の出来事――…