笑顔でさよならを

私はそんな事を考えながら歩いていると


「繭花ちゃん、着いたよ」


充の声で私は我に返る。


「送ってくれて、ありがとう。じゃぁね」


そう言って、私はカギを開けようとする。


「あっ、待って」


充は私の腕を掴んで、グイッと引っ張る。


そして、軽い、触れるだけのキスをする。


「……いやっ」


だけど私は、反射的に充の胸を手で押していた。


「えっ?」


そんな私の態度に、充はすごく驚いていた。


だって、いつも、別れ際にキスをする。


いつもの事なのに、私はそれを拒んだから。